体の硬さが将来の医療費を増やす?意外なリスクと今日からできる柔軟習慣
体が硬いと感じたら要注意 将来の医療費につながる意外なリスク
「最近、前屈をしても床に手が届かなくなった」「ちょっとした段差でつまずきやすい」など、体の硬さを実感することはありますでしょうか。体が硬くなることは、単に動きにくさを感じるだけでなく、実は将来の病気や怪我のリスクを高め、結果として医療費の負担を増やす可能性があることをご存じでしょうか。
中年期以降、体の柔軟性は徐々に失われていきます。しかし、これを「年のせいだから仕方ない」と放置してしまうと、思わぬ形で健康と家計に影響を及ぼすことがあります。
柔軟性低下が招く病気・怪我のリスク
体の柔軟性が失われることは、様々な身体の機能低下につながります。特に注意したいリスクは以下の通りです。
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転倒リスクの増大
- 体が硬いと、バランスを崩した際に素早く反応したり、手足で体を支えたりといった動作が難しくなります。また、股関節や足首の可動域が狭まることで、歩行が不安定になりやすくなります。
- これは、転倒のリスクを大きく高めます。厚生労働省の調査などでも、高齢者の転倒はQOL(生活の質)を著しく低下させる主要因の一つとされており、特に中年期からの体の機能低下がその背景にあることが指摘されています。
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関節への負担増加
- 体の特定の部位が硬いと、他の部位でその動きを代償しようとします。例えば、股関節が硬いと膝や腰に負担がかかりやすくなります。
- これにより、関節の軟骨がすり減りやすくなったり、周囲の組織に炎症が起きやすくなったりします。長期的には、変形性関節症などの進行を早める要因となる可能性が考えられます。
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姿勢の悪化と関連する不調
- 筋肉や関節の柔軟性が低下すると、正しい姿勢を保つことが難しくなります。猫背や体の歪みが生じやすくなり、肩こり、腰痛、首の痛みなどの慢性的な不調を引き起こしたり悪化させたりすることがあります。
転倒や関節疾患がもたらす医療費と経済的負担
これらのリスクが現実のものとなった場合、健康面だけでなく、家計にも大きな影響が及びます。
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転倒による骨折の場合:
- 特に大腿骨近位部骨折(太ももの付け根の骨折)は、高齢者にとって重篤な結果を招きやすい怪我です。多くの場合、手術が必要となり、長期の入院やリハビリが必要となります。
- 一般的な入院期間は数週間から1ヶ月以上に及ぶことも珍しくありません。医療費は、手術や入院、リハビリを含め、高額になる傾向があります。例として、医療機関や手術内容、入院期間によって変動しますが、自己負担額(3割負担の場合)でも数十万円以上になるケースは少なくありません。さらに、その後の通院やリハビリ、介護が必要になった場合の費用負担も考慮する必要があります。
- 介護が必要になった場合、介護サービスの利用料や、それに伴う生活費の変化など、経済的な影響は長期にわたります。
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変形性関節症などの場合:
- 膝や股関節の変形性関節症が進行すると、痛みの軽減や機能改善のために通院、投薬、注射、物理療法などが必要となります。これらの費用も積み重なれば無視できない金額になります。
- 症状が進行し、人工関節置換術などの手術が必要になった場合、手術・入院費用は高額になります。高額療養費制度により自己負担額には上限がありますが、それでも一定の負担は生じますし、手術前の検査や手術後のリハビリなど、関連する費用も発生します。
体の柔軟性の低下は、直接的な病気というよりは、病気や怪我を「招きやすくする」要因です。そして、これらの病気や怪我は、いったん発生すると治療に時間と費用がかかり、将来の医療費や介護費を大きく押し上げる可能性があるのです。健康への投資としての柔軟性維持は、将来の家計を守るための重要な一歩と言えます。
将来の医療費削減につながる無理なくできる柔軟習慣
それでは、どのようにすれば体の柔軟性を維持・向上させることができるのでしょうか。「体が硬いから運動は苦手」と感じる方でも無理なく続けられる、日常に取り入れやすい習慣をご紹介します。
重要なのは、「毎日少しずつ行う」ことです。一度にたくさんやろうとせず、短時間でも良いので継続することを心がけてください。
簡単ストレッチの例
以下は、中年期に硬くなりやすく、柔軟性向上によって転倒リスク軽減や関節負担軽減が期待できる部位を中心とした簡単なストレッチの例です。痛みを感じるほど無理に行わず、心地よい範囲で行ってください。
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ふくらはぎのストレッチ:
- 立ったまま、片足を後ろに大きく引き、かかとを床につけます。前の膝を軽く曲げ、後ろ足のふくらはぎを伸ばします。
- 壁などに手をついて体を支えても良いでしょう。
- 左右それぞれ20秒ずつキープします。
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太もも裏(ハムストリングス)のストレッチ:
- 椅子に浅く座り、片方の膝を軽く曲げたまま前に伸ばします。
- 伸ばした足のつま先を天井に向け、背筋を伸ばして股関節から体を前に倒します。
- 太ももの裏に伸びを感じたら、20秒キープします。
- 左右それぞれ行います。
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股関節のストレッチ:
- 椅子に座ったまま、片方の足首をもう一方の太ももの上に乗せます。
- 背筋を伸ばし、股関節から体をゆっくり前に倒します。
- お尻や股関節の外側に伸びを感じたら、20秒キープします。
- 左右それぞれ行います。このストレッチは転倒リスク軽減にもつながる重要な部位です。
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肩甲骨周りのストレッチ:
- 両手を肩に置き、肘で円を描くように前回し、後ろ回しをそれぞれ10回ずつ行います。
- 座ったままでも立ったままでもできます。PC作業の合間などにも行いやすいストレッチです。
継続のためのヒント
- 時間を決める: 「朝起きたら」「お風呂上がり」「寝る前」など、行う時間を決めておくと習慣化しやすくなります。
- 「ながら」で取り入れる: テレビを見ながら、歯磨きをしながらなど、何か別のことをしながら行うのも良い方法です。
- 仲間を見つける: 家族や友人と一緒に取り組むことで、モチベーションを維持しやすくなります。
- 記録をつける: 簡単なカレンダーなどにマークをつけるだけでも、達成感につながり継続の後押しになります。
- 完璧を目指さない: 毎日できなくても気にしないことが大切です。できた自分を褒めて、また明日から頑張ろうという気持ちで取り組みましょう。
まとめ
体の柔軟性の低下は、将来の転倒や骨折、関節疾患といった病気・怪我のリスクを高め、結果として医療費の負担を増やす可能性を秘めています。しかし、諦める必要はありません。今回ご紹介したような無理なくできる簡単なストレッチや柔軟習慣を日常に取り入れることで、体の機能を維持・向上させることが可能です。
日々の小さな努力が、将来の大きな病気や怪我を防ぎ、健康で活動的な生活を長く続けることにつながります。そしてそれは、結果として不要な医療費を削減し、大切な家計を守ることにもつながるのです。今日からできることから、少しずつ始めてみてはいかがでしょうか。健康への投資が、明るい将来を築く一助となることを願っております。