血圧高めを放置すると将来の医療費が激増? データで見るリスクと自宅でできる簡単対策
健康診断で血圧を指摘されたら考えること
健康診断で血圧が高めであると指摘された場合、特に自覚症状がないと「まあ大丈夫だろう」と軽く考えてしまうことがあるかもしれません。しかし、高血圧は「サイレントキラー」とも呼ばれ、静かに血管を傷つけ、将来重篤な病気を招く可能性があります。
日々の血圧コントロールが将来の健康状態だけでなく、ご自身の家計、特に医療費にどう影響するのかをご存じでしょうか。本記事では、高血圧を放置することで考えられる病気のリスクと、それに伴う医療費について具体的なデータや目安を交えながら解説し、今日からでも無理なく始められる改善策をご紹介いたします。
高血圧が招く将来の病気リスクとその影響
私たちの体は、心臓から送り出された血液が血管を通って全身に酸素や栄養を運びます。血圧が高い状態が続くと、血管には常に強い圧力がかかり、血管の壁が厚く硬くなる「動脈硬化」が進みやすくなります。
この動脈硬化は、以下のような深刻な病気を引き起こす大きな原因となります。
- 脳卒中: 脳の血管が詰まる(脳梗塞)または破れる(脳出血、くも膜下出血)病気です。後遺症が残ることも少なくありません。
- 心臓病: 心筋梗塞や狭心症など、心臓の血管が詰まったり狭くなったりする病気です。心不全を引き起こすこともあります。
- 腎臓病: 腎臓の血管が傷つき、腎臓の機能が低下する慢性腎臓病を引き起こします。進行すると人工透析が必要になる場合もあります。
- 大動脈瘤、大動脈解離: 体の中で最も太い血管である大動脈に瘤ができたり、血管の壁が裂けたりする命に関わる病気です。
これらの病気は、発症すると入院や手術、長期のリハビリテーションが必要となる場合が多く、患者さんご自身の体への負担はもちろん、ご家族の介護負担、そして経済的な負担も非常に大きくなります。
病気にかかる具体的な医療費の目安
では、実際にこれらの病気にかかった場合、どの程度の医療費がかかる可能性があるのでしょうか。具体的な数字や目安を知ることは、将来への備えを考える上で重要です。
日本の医療費は、国民皆保険制度により自己負担割合が決まっていますが、高額療養費制度を利用しても、治療内容や入院期間によってはかなりの金額が必要になる場合があります。
例えば、脳卒中や心筋梗塞で入院した場合、集中治療や手術が必要となると、治療費全体では数百万円になることも珍しくありません。自己負担が3割(70歳未満の方の場合)であっても、高額療養費制度を適用しない場合の窓口負担は高額になります。高額療養費制度を利用した場合でも、所得に応じた自己負担限度額までは支払いが必要ですし、差額ベッド代や食事療養費、さらにはリハビリや介護にかかる費用など、医療費以外にも様々な費用が発生することを考慮する必要があります。
厚生労働省の患者調査によると、脳血管疾患(脳卒中など)の平均在院日数は約70日、虚血性心疾患(心筋梗塞など)は約15日となっています(令和元年)。入院期間が長引けば、それだけ費用もかさみます。また、退院後も通院やリハビリ、薬代などが継続的に必要となるため、経済的な負担は長期にわたります。
一方、高血圧そのものの治療にかかる費用はどうでしょうか。血圧を下げる薬を服用する場合、薬の種類や量によって異なりますが、月に数千円程度かかることが一般的です。これに通院費(初診料・再診料など)が加わります。年間で見れば数万円程度になりますが、これは重篤な病気にかかった場合の医療費と比較すれば、はるかに少額です。
このように、日々の高血圧管理にかかる費用は、将来重い病気にかかってしまうリスクを減らし、結果的に大きな医療費支出を防ぐための「健康への先行投資」と考えることができます。
無理なく実践できる「健康投資」習慣
健康診断で血圧を指摘された方が、「健康に気をつけよう」と思っても、過去に健康法が続かなかった経験があると、なかなか一歩を踏み出せないかもしれません。しかし、何も難しいことをする必要はありません。日常生活の中で少し意識するだけでも、血圧コントロールに繋がる習慣はたくさんあります。大切なのは、一度に全てを変えようとせず、ご自身にとって無理のない範囲で、できることから始めることです。
以下に、自宅で比較的簡単に行える血圧対策につながる習慣をいくつかご紹介します。
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食塩の摂取量を減らす工夫: 日本人は食塩摂取量が多い傾向にあります。加工食品や外食には多くの食塩が含まれていますので、意識して減らすことが重要です。例えば、
- カップ麺やインスタント食品の汁は全て飲まない。
- 漬物や練り物の摂取を控える。
- 外食では麺類の汁を残す、定食のご飯を少なめにする。
- 自宅では、醤油や味噌の使用量を減らし、代わりに酢、レモン、香辛料、出汁などを活用する。
- 減塩タイプの調味料を試してみる。 目標は1日6グラム未満ですが、まずは普段の食塩摂取量を知り、少しずつ減らしていくことから始めましょう。
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野菜や果物を積極的に摂る: 野菜や果物に含まれるカリウムは、体内の余分な食塩を排出するのを助ける働きがあります。毎日の食事に野菜を1品増やす、間食を果物に変えるなど、無理なく取り入れてみましょう。
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体を動かす習慣をつける: ウォーキングや軽いジョギング、サイクリングなどの有酸素運動は血圧を下げる効果が期待できます。
- エレベーターやエスカレーターを使わずに階段を使う。
- 一駅分歩いてみる。
- テレビを見ながら足踏みをする。
- 椅子に座ってできる簡単なストレッチをする。 まずは1日に合計10分程度からでも構いません。毎日続けることが大切です。
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適正体重を維持する: 体重が増えすぎると血圧も上がりやすくなります。ご自身の身長に見合った適正体重(BMI:体重kg ÷ 身長m ÷ 身長m で求められ、18.5~25未満が目安)を把握し、食事と運動でコントロールを心がけましょう。
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ストレスを上手に解消する: ストレスは血圧を一時的に上昇させます。自分なりのリラックス方法を見つけ、日常生活に組み込むことが大切です。
- 趣味の時間を作る。
- 軽い運動や散歩をする。
- 音楽を聴く。
- 湯船にゆっくり浸かる。
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十分な睡眠をとる: 睡眠不足も血圧に影響を与えることがあります。毎日同じ時間に寝起きするなど、質の良い睡眠を心がけましょう。
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自宅で血圧を測定する習慣をつける: 毎日決まった時間(朝起きてすぐ、夜寝る前など)に血圧を測定し、記録をつけることで、ご自身の血圧の状態を把握できます。測定値が高い日が続く場合は、早めにかかりつけ医に相談しましょう。血圧計は数千円から購入できますが、ご自身の健康状態を把握するための有効な投資と言えます。
習慣を継続するためのヒント
健康習慣を続けるのが難しいと感じることは、多くの方が経験することです。継続のためのヒントをいくつかご紹介します。
- 小さな目標から始める: 「毎日30分歩く」ではなく、「まず毎日10分散歩する」のように、達成しやすい小さな目標を設定します。
- 記録をつける: 血圧の記録だけでなく、体重、食事内容、運動内容などを簡単に記録することで、変化を実感しやすくなります。
- ご褒美を設定する: 目標を達成できたら、小さなご褒美を自分に与えるなど、モチベーションを維持する工夫をします。
- 家族や友人と共有する: 周囲の人に協力をお願いしたり、一緒に取り組んだりすることで、継続しやすくなることがあります。
- 完璧を目指さない: 毎日完璧にできなくても落ち込む必要はありません。できなかった日があっても、次の日から再開すれば大丈夫です。
まとめ:健康への投資は将来の家計を守る
血圧が高めであるという指摘は、体が発している大切なサインです。これを機に日々の生活習慣を見直すことは、将来の重篤な病気を予防し、結果として多額の医療費負担を回避することにつながります。
日々の小さな「健康投資」は、目先はそれほど劇的な変化を感じられないかもしれませんが、長期的な視点で見れば、ご自身の健康寿命を延ばし、活き活きとした生活を続けるための基盤となり、同時に大切な家計を守るための賢明な備えとなります。
まずは、今日からできること、一つでも良いので、ご自身のペースで始めてみてはいかがでしょうか。ご自身の健康と将来の安心のために、一歩を踏み出すことを応援しております。