そのめまい・ふらつき、放置すると将来の医療費が激増?データで見るリスクと対策習慣
日常的なめまい・ふらつき、見過ごしていませんか
年齢を重ねるにつれて、「なんとなく体がふらつく」「立ち上がるときにクラっとする」といっためまいやふらつきを感じることが増えた、という方は少なくないでしょう。多くの場合、「疲れているだけかな」「年のせいだろう」と考えて、そのままにしているかもしれません。しかし、これらの症状は体の重要なサインである可能性があり、放置することで将来、思わぬ病気につながり、結果的に医療費の負担が増大してしまうこともあります。
経理のお仕事をされている方は、日頃から数字と向き合い、論理的に物事を捉えることに慣れていらっしゃるかもしれません。体や健康についても、漠然とした不安だけでなく、「具体的にどのようなリスクがあり、それにはどれくらいの費用がかかる可能性があるのか」を知ることで、将来に向けた対策を具体的に考えやすくなるのではないでしょうか。
めまい・ふらつきが示す体のサインとそのリスク
めまいやふらつきの原因は様々です。耳の奥にある平衡感覚器の異常(良性発作性頭位めまい症、メニエール病など)、血圧の変動(特に立ちくらみ)、自律神経の乱れ、貧血、薬の副作用など、比較的軽度なものから、脳の病気(脳梗塞、脳出血、脳腫瘍など)の前兆である可能性まであります。
特に注意が必要なのは、以下のようなケースです。
- 激しい頭痛や手足のしびれ、言葉のもつれを伴うめまい
- 意識を失いそうになる、または失っためまい
- 今まで経験したことのないような種類のめまい
- 繰り返すめまいや、だんだんひどくなるめまい
これらの症状が一つでも当てはまる場合は、できるだけ早く医療機関を受診することが重要です。
また、重大な病気でなくても、めまいやふらつきが慢性化すると、日常生活に支障をきたし、活動量の低下や転倒のリスクを高めます。特に中高年の方にとって、転倒による骨折は寝たきりにつながる大きな原因の一つであり、その後の医療費・介護費負担は計り知れません。
めまい・ふらつきからつながる病気と医療費
めまいやふらつきの症状が現れた場合、原因を特定するために様々な検査が行われます。耳鼻咽喉科や脳神経内科、かかりつけの内科などを受診することになります。
- 診察・検査費用: 初診料に加え、平衡機能検査、聴力検査、眼振検査などが行われます。さらに、脳の異常が疑われる場合は、頭部MRIやCTといった画像検査が行われることもあります。これらの検査費用は、保険適用後でも数千円から数万円程度かかるのが一般的です。
原因が特定され、治療が必要となった場合、病気の種類によってかかる医療費は大きく異なります。
- 良性発作性頭位めまい症など(比較的軽度): 特定の頭位でのみめまいが起こるこの病気は、医師や理学療法士による特定の頭位変換リハビリテーションで改善することが多いです。治療期間は比較的短く、医療費も数千円から数万円程度で済む場合が多いでしょう。しかし、再発する可能性もあります。
- メニエール病など(慢性疾患): 症状をコントロールするために、投薬治療や生活指導が中心となります。通院が継続的に必要となり、薬代もかかります。症状が重い場合や改善が見られない場合は、入院して点滴治療を行ったり、手術が必要になったりすることもあります。慢性的な通院と投薬にかかる費用は、年間数万円から場合によっては数十万円を超えることもあります。
- 脳血管障害(脳梗塞・脳出血など): めまいやふらつきが脳血管障害の前兆であった場合、治療は非常に高額になります。急性期病院での入院は数週間から数ヶ月におよぶことも珍しくなく、手術や集中的な治療、リハビリテーションが行われます。厚生労働省のデータによると、脳卒中の平均入院日数は約70日程度(※1)となっています。医療費は治療内容によって大きく異なりますが、高額療養費制度を利用しても自己負担額は大きくなり、数十万円以上になることは覚悟する必要があります。さらに、後遺症が残った場合は、その後の通院、リハビリ、そして介護にかかる費用が生涯にわたって発生し、家計に非常に重い負担となります。
※1:厚生労働省「平成29年(2017)患者調査の概況」主な傷病別の平均在院日数
めまい・ふらつきを軽視し、重大な病気の発見が遅れたり、転倒による骨折をしたりした場合、その治療やその後のケアにかかる費用は、めまい自体を早期に診断・治療する場合と比較して、桁違いに大きくなる可能性があるのです。
無理なく実践できるめまい・ふらつき対策と継続のヒント
めまい・ふらつきの原因を特定し、適切な治療を受けることが最も重要ですが、日頃からできる対策も多くあります。特別なことではなく、日々の生活に少し工夫を加えることで、健康維持と将来の医療費削減につながります。
1. 十分な水分摂取 脱水はめまいやふらつきの原因の一つです。特に起床時や入浴後、運動後だけでなく、日常的にこまめに水分を摂りましょう。一日あたり1.5リットルから2リットルを目安に、水やお茶を飲む習慣をつけます。デスクワーク中も、手の届くところに飲み物を置いて意識的に飲むようにします。
2. 急な動きを避ける 寝ている状態から急に立ち上がったり、座った状態から急に立ち上がったりすると、血圧が急激に下がり、めまい(起立性低血圧)を起こすことがあります。立ち上がる際は、一度座ってから、またはベッドの端に腰掛けてから、ゆっくりと立ち上がるようにします。
3. バランスの良い食事 特定の栄養素の不足が貧血などを引き起こし、めまいにつながることがあります。鉄分やビタミンB12などを意識して摂りましょう。また、塩分の摂りすぎは血圧を上昇させる可能性があり、間接的にめまいに影響することもあります。加工食品や外食を控えるなど、バランスの取れた食生活を心がけます。
4. 軽い運動とバランス感覚の維持 ウォーキングなどの有酸素運動は血行促進や自律神経の調整に役立ちます。また、片足立ちやつま先立ちなど、簡単なバランス運動を日常生活に取り入れることで、ふらつき防止や転倒予防につながります。例えば、歯磨き中に片足立ちをしてみる、といった「ながら運動」なら続けやすいでしょう。
5. 質の良い睡眠の確保 睡眠不足や睡眠の質の低下は自律神経の乱れを招き、めまいの一因となります。毎日同じ時間に寝起きする、寝る前にカフェインやアルコールを控える、寝室の環境を整える(暗く静かにする)など、心地よく眠るための工夫をします。
6. ストレスマネジメント 過度なストレスや疲労は自律神経のバランスを崩し、めまいを引き起こしやすくします。趣味の時間を持つ、軽いストレッチをする、深呼吸をする、湯船にゆっくり浸かるなど、自分なりのリラックス方法を見つけて実践しましょう。
継続のためのヒント: * 小さな目標から始める: 一度に全てを変えようとせず、「今日からコップ一杯の水を朝一番に飲む」といった小さな目標から始めます。 * 記録をつける: 飲んだ水分量や軽い運動の内容などを簡単に記録すると、達成感が得られ、継続の励みになります。 * 習慣化の工夫: 既存の習慣と紐づける(例: 「食後に歯磨きをする前に片足立ちをする」)。 * 完璧を目指さない: できなかった日があっても自分を責めず、「また明日から頑張ろう」と気持ちを切り替えることが大切です。
健康投資としてのめまい・ふらつき対策
めまいやふらつきを放置せず、体の声に耳を傾け、必要な受診と日々の対策を行うことは、単に現在の不調を改善するだけでなく、将来の重大な病気を予防し、高額な医療費負担を回避するための「健康投資」と言えます。
日々の少しの意識と行動が、将来の健康な体と安定した家計を守ることに繋がります。今日からできる対策を一つずつ始めてみてはいかがでしょうか。