座りすぎで医療費が増える?健康と家計を守る「立つ・歩く」習慣
座りすぎが潜むリスク、健康診断の結果と将来への不安
日々のデスクワークや通勤、自宅でのリラックスタイム。気づけば一日の大半を座って過ごしている、という方は少なくないかもしれません。特に、パソコンを使った作業が多いお仕事の方にとっては、座っている時間が長いことが当たり前になっていることと存じます。
近年、この「座りすぎ」が、喫煙に匹敵するほど健康に悪影響を及ぼす可能性があるとして注目されています。健康診断で指摘を受けた項目が多くなり、将来の病気やそれに伴う医療費への不安を感じていらっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。過去に健康習慣を試みたものの、なかなか続かなかったという経験もあるかもしれません。
しかし、ご自身の健康状態と将来かかる可能性のある医療費には、実は密接な関連があります。そして、その関連性を理解することで、日々のちょっとした習慣改善が、健康面だけでなく家計にとっても大きなメリットをもたらすことが見えてきます。
長時間の座りすぎが招く病気リスクとそれに伴う医療費
長時間座り続ける習慣は、様々な病気のリスクを高めることが分かっています。例えば、以下のような病気との関連が指摘されています。
- 血行不良と血栓症: 座っている時間が長いと下半身の血行が悪くなり、エコノミークラス症候群のような血栓(血の塊)ができやすくなります。これが肺などに飛ぶと、命にかかわる肺塞栓症を引き起こす可能性もあります。
- 肥満、メタボリックシンドローム: 活動量が減るため消費カロリーが減り、内臓脂肪が蓄積しやすくなります。これは高血圧、脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病のリスクを高めます。
- 心血管疾患: 長時間の座位は、独立して心筋梗塞や脳卒中などのリスクを高めるという研究結果も存在します。
- がん: 大腸がん、乳がんなど、一部のがんのリスク上昇との関連も示唆されています。
- 腰痛や肩こり: 不自然な姿勢で長時間座ることは、筋肉や骨格に負担をかけ、慢性的な腰痛や肩こりの原因となります。
これらの病気にかかった場合、治療には多額の医療費がかかる可能性があります。例えば、
- 心筋梗塞: 入院期間は平均10日から2週間程度ですが、治療内容によっては数十万円から100万円以上の医療費がかかる場合もあります(高額療養費制度の適用はありますが、自己負担は発生します)。その後の通院、リハビリテーション、薬剤費も継続的に必要になります。
- 糖尿病: 合併症がない場合の年間の医療費は数万円から十数万円程度とされていますが、合併症(腎症、網膜症、神経障害など)が進むと、透析治療が必要になったり、失明したりするリスクが高まり、医療費は年間数百万円規模に増加する可能性も否定できません。
- 慢性腰痛: 病院での検査、リハビリ、投薬、場合によっては手術など、治療内容によって費用は異なりますが、長期化すると年間数万円から数十万円の負担となることも考えられます。
これらの例からも分かるように、健康習慣が損なわれることは、将来的に家計に大きな負担を及ぼす可能性があるのです。
健康と家計を守る「立つ・歩く」習慣:無理なく実践できる改善策
では、どのようにすれば座りすぎのリスクを減らし、健康と家計を守ることができるのでしょうか。過去に健康習慣が続かなかった経験がある方も、ご安心ください。大切なのは、一度に全てを変えようとせず、無理のない範囲で、小さな「立つ」「歩く」習慣を取り入れることです。
以下に、デスクワーク中心の生活でも実践しやすい具体的な改善策をいくつかご紹介します。
- 1時間に数分立ち上がる・歩く: デスクワーク中、集中しているとあっという間に時間が過ぎてしまいますが、意識的に1時間に一度は立ち上がり、軽く伸びをしたり、数分間歩いたりする時間を作りましょう。スマートフォンのアラームやパソコンのタイマー機能を活用すると忘れにくいです。
- 電話中は立つ: 電話での会話中は、座ったままでなく立ち上がって話す習慣をつけましょう。移動しながら話せば、さらに活動量を増やせます。
- 社内・自宅内での移動は意識的に: コピーを取りに行く、資料を取りに行く、お手洗いに行くなどの際、少し遠回りをする、階段を使うなど、意識的に歩く距離を増やしてみましょう。
- スタンディングデスクや高めの台を活用: 可能であれば、短時間だけでもスタンディングデスクを利用したり、高めの台の上でノートパソコン作業をしたりする時間を設けることも有効です。本格的な導入が難しくても、段ボールなどを活用して一時的に試すこともできます。
- 休憩時間は体を動かす: お昼休みなど、休憩時間にはデスクから離れて少し散歩をしたり、簡単なストレッチをしたりする時間を設けましょう。
これらの習慣は、どれも特別な場所や時間を必要とせず、日常生活の中で実践しやすいものです。
小さな一歩がもたらす長期的なメリット
「立つ」「歩く」習慣を少しずつでも継続することで、血行が改善され、代謝が促進されます。これにより、肥満や生活習慣病のリスクを低減することにつながります。腰痛や肩こりの軽減も期待できます。
そして、これらの健康状態の改善は、将来的な病気の発症リスクを減らし、結果として医療機関にかかる頻度や治療にかかる費用を抑えることにつながります。つまり、日々の小さな「立つ」「歩く」習慣への投資は、将来の大きな医療費負担を避けるための賢明な「健康投資」と言えるのです。
継続するためには、最初から完璧を目指さないことが重要です。今日は1時間に1回だけ立ち上がってみよう、電話の時は立つように心がけてみよう、といった小さな目標から始め、できたら自分を褒めてあげましょう。家族や同僚と協力するのも良い方法です。
まとめ
長時間の座りすぎは、様々な病気のリスクを高め、将来の医療費増加につながる可能性があるということをご理解いただけたかと存じます。しかし、過度に恐れる必要はありません。日々の生活の中で「立つ」「歩く」といった簡単な習慣を少しずつ取り入れることから始めてみてください。
この小さな一歩が、ご自身の健康を守り、将来的な医療費負担を軽減することに繋がります。健康は単なる目標ではなく、将来の家計を守るための大切な資産です。今日からできることから始め、健康と家計双方にとってより良い未来を築いていきましょう。