いびきや日中の眠気、放置で将来医療費が激増？データで見る睡眠時無呼吸症候群のリスクと対策習慣
見過ごされがちな「いびき」や「日中の眠気」がもたらす、将来の医療費リスク
健康診断でいくつかの項目に指摘があり、将来の健康や医療費について漠然とした不安を感じていらっしゃる方も多いかと存じます。特に、日々の疲れからくるものと思いがちな「いびき」や「日中の眠気」も、実は放置すると将来の医療費負担を大きく増加させる可能性のあるサインかもしれません。
多くの方が経験するいびきや、会議中にうとうとしてしまうといった日中の眠気は、「疲れているから仕方がない」「歳のせいかな」と軽く考えがちです。しかし、これらは「睡眠時無呼吸症候群（SAS）」という、深刻な病気の兆候である場合があります。SASは、睡眠中に何度も呼吸が止まったり浅くなったりする病気であり、自覚がないまま進行しているケースも少なくありません。
睡眠時無呼吸症候群（SAS）が引き起こす病気と医療費の関連性
SASを放置すると、睡眠中の低酸素状態や覚醒反応が繰り返し起こり、心臓や血管に大きな負担をかけます。これにより、様々な病気のリスクが高まることが分かっています。
具体的には、
- 高血圧
- 心疾患（狭心症、心筋梗塞など）
- 脳卒中（脳梗塞、脳出血など）
- 糖尿病
- 脂質異常症
といった、中年期以降に発症しやすい生活習慣病や、生命に関わる重篤な病気の発症リスクが数倍に跳ね上がるとされています。例えば、SASを放置している方は、そうでない方に比べて高血圧になるリスクが約2倍、心血管疾患で死亡するリスクは約3倍といったデータも報告されています。
これらの病気を発症した場合、必要となる医療費はSASの検査・治療費用と比較にならないほど高額になる可能性が高まります。
具体的な医療費の目安（概算）
- 睡眠時無呼吸症候群（SAS）の検査・治療費用
- 簡易睡眠検査（自宅）：数千円程度（3割負担の場合）
- 精密睡眠検査（PSG検査、入院）：1泊2日で2万円〜5万円程度（3割負担の場合）
- CPAP（持続陽圧呼吸療法）治療：月々5千円程度（3割負担の場合、機器レンタル代含む）
- SASが原因で発症リスクが高まる病気の治療費用
- 高血圧・糖尿病などの管理：月々数千円〜数万円（薬代含む）
- 心筋梗塞・脳卒中発症時の入院・手術：数十万円〜100万円超（自己負担分、高額療養費制度適用後でも）
- 脳卒中後のリハビリテーション：回復期リハビリ病棟入院で数十万円〜（月額自己負担上限あり）、外来・訪問リハビリ費用
CPAP療法にかかる月々の費用は、確かに毎月の支出となりますが、これを継続することで将来の発症リスクを抑えられれば、その後の重病による高額な入院費、手術費、長期にわたる治療費、さらには介護費用といった、桁違いの経済的負担を回避できる可能性が高まります。
将来の医療費を減らすための実践的な対策習慣
将来の健康と家計を守るためには、いびきや日中の眠気を単なる加齢や疲れと見過ごさず、SASの可能性を考慮し、適切な対策を講じることが重要です。
1. 医療機関への相談
まず第一歩として、大きないびきを指摘されたり、日中の強い眠気を感じたりする場合は、呼吸器内科や耳鼻咽喉科、睡眠外来など、SASを診断・治療できる医療機関に相談することをお勧めします。専門医による診断を受け、必要であれば適切な治療（CPAP療法、マウスピース、手術など）を開始することが、病気のリスクを減らす最も確実な方法です。
2. リスクを減らす生活習慣の改善
SASの発症や悪化には、生活習慣が深く関わっています。医療機関での治療と並行して、あるいはリスクが高いと指摘された段階から、以下の習慣を無理のない範囲で取り入れてみましょう。ペルソナの方のように、過去に健康法が続かなかった経験がある方もいらっしゃるかと思います。全てを一度に始める必要はありません。小さな目標から、段階的に取り組んでみてください。
- 減量に取り組む
- 肥満、特に首周りへの脂肪蓄積は気道を狭くし、いびきや無呼吸の原因となります。急激な減量でなく、「まずは〇kg減らす」といった具体的な目標設定が効果的です。食事で炭水化物を少し減らす、エレベーターではなく階段を使うといった、日常生活で無理なくできることから始めましょう。
- アルコールを控える
- 寝る前のアルコール摂取は、上気道の筋肉を弛緩させ、気道を狭くしていびきや無呼吸を悪化させます。「週に〇日は禁酒する」「寝る3時間前からは飲まない」など、できる範囲で制限を設けてみましょう。
- 禁煙する
- 喫煙は気道の炎症を引き起こし、むくみによって気道を狭くします。禁煙は、SASだけでなく様々な病気のリスクを減らす上で極めて重要です。一度に難しい場合は、本数を減らす、禁煙外来を利用するなど、専門家のサポートも検討してみてください。
- 寝姿勢を工夫する
- 仰向け寝は舌が喉に落ち込みやすく、気道を狭くすることがあります。横向き寝の方がいびきが出にくい場合があります。抱き枕を使ったり、寝具を工夫したりすることで、横向き寝をサポートできます。
- 日中の適度な運動
- 全身の筋力を維持し、肥満を予防することは、SASのリスク軽減につながります。また、適度な運動は睡眠の質を向上させる効果も期待できます。特別な時間を取るのが難しければ、通勤時に一駅分歩く、休憩時間に軽いストレッチをするなど、隙間時間を活用しましょう。
まとめ：健康な睡眠は将来への確かな投資
いびきや日中の眠気は、単なる不快な症状ではなく、将来の健康と家計に大きな影響を与える睡眠時無呼吸症候群（SAS）のサインである可能性があります。SASを放置することで高まる様々な病気の発症リスクと、それに伴う高額な医療費負担を考えると、早期に専門医に相談し、適切な診断と治療を受けることは、将来への確かな「健康投資」と言えます。
また、減量や禁酒、寝姿勢の工夫といった日々の小さな習慣改善は、SASのリスクを減らし、睡眠の質を高めるだけでなく、心身全体の健康増進にもつながります。これらを無理のない範囲で継続することで、将来の医療費を抑制し、健康で充実した生活を長く送ることが可能になります。
あなたのいびきや眠気、一度専門家に相談してみてはいかがでしょうか。それが、将来の健康と家計を守るための一歩となるはずです。